この記事の要点(2026年10月20日更新)

Q. RFIDで、棚卸・検品の時間はどれくらい減る?
経済産業省と日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の「ドラッグストアスマート化宣言」に基づく実証実験(2019年2月、3店舗)では、手作業と比べて検品の時間が77〜81%、棚卸の時間が80%短くなりました。おおむね約8割の短縮です。

Q. どんな条件の数字?
ドラッグストアの店舗で、商品にあらかじめ電子タグを貼った状態での比較です。タグを貼る手間や、水分の多い商品・アルミ包装の商品が読み取りにくいといった課題も報告されています。

Q. 何から始めればいい?
時間のかかっている「数える・探す」作業を1つ選び、対象を絞って試し、導入前後の作業時間を数字で比べます。

出典: JACDS が2019年8月に公表した電子タグ(RFID)実証実験の結果(報告書は JACDS 会員向けに公開)。報道: ダイヤモンド・チェーンストアオンライン(2019年9月3日)、薬事日報(2019年10月31日)

日々の物流現場で、在庫差異や出荷ミス、それにともなう長時間労働に頭を悩ませていませんか。「Excelでの在庫管理や目視での検品に、そろそろ限界を感じている」という声は、多くの現場で聞きます。

この記事では、RFIDの実証実験の数字を条件とあわせて確認したうえで、棚卸・検品の時間を減らす道具と、失敗しない導入の進め方を、物流改善の現場を支援してきたコンサルタントの立場から解説します。

なぜ、在庫差異と出荷ミスが減らないのか?

「Excelと目視」に頼る管理の限界

月末になると通常業務を止めてスタッフ総出で棚卸を行い、読み上げた数字をExcelに手入力する。私も物流センター長として、こうした光景を何度も見てきました。

こうした管理は、どうしても人のスキルや経験に頼ります。特定のベテランしか正確な在庫を把握できない状態(属人化)になりやすく、どれほど注意しても、目視や手入力では数え間違いや入力ミスが起こります。これが在庫差異や誤出荷の根本的な原因です。

見過ごされがちな「隠れコスト」

システム上は在庫があるのに実物がなければ、注文を受けても出荷できず、販売の機会を逃します。逆に、実物があるのにデータ上はゼロなら、それは過剰在庫として保管場所と資金を圧迫します。

誤出荷は、再配送や返品処理の手間だけでなく、お客様からの信頼を失うことにもつながります。こうしたコストは損益計算書の科目に直接は出てこないため、見過ごされがちです。

RFIDで、棚卸・検品の時間はどれくらい減る?

RFID(電子タグ)は、商品に貼ったICタグを、専用のリーダーで電波を使って読み取る仕組みです。バーコードのように1つずつ読む必要がなく、箱を開けずに複数の商品をまとめて読み取れます。

経済産業省と日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の「ドラッグストアスマート化宣言」に基づいて、2019年2月に3店舗で行われた実証実験では、手作業との比較で次の結果が出ました。

作業 作業時間の短縮 店舗 対象
棚卸 80% ウエルシア千代田御茶ノ水店 タバコ・新聞・雑誌を除く約2万点
検品 77% ココカラファイン清澄白河店 約460点
検品 81% ツルハドラッグ目黒中根店 約500点

出典: JACDS が2019年8月23日に公表した実証実験の結果(報告書は JACDS 会員向けに公開)。数字は ダイヤモンド・チェーンストアオンライン(2019年9月3日)と薬事日報(2019年10月31日)の報道による。

この数字を読むときの注意

  • 店舗での実験です。 倉庫とは商品の数や置き方が違います。ただ、「1つずつ数える作業を、まとめて読み取りに置き換える」という仕組みは同じです
  • タグを貼る手間は含まれていません。 ウエルシアの店舗では、ほぼすべての商品に手作業でタグを貼っています。参加企業からは「店舗での人手によるタグの貼り付けは不可能と実感した。メーカー側で付ける仕組み(ソースタギング)が不可欠」という声も出ています
  • 読み取りにくい商品があります。 読み取りの精度は97.1〜100%でしたが、水分の多い商品やアルミ包装の商品は読み取りにくいという課題が挙がっています

RFIDの効果は大きい一方で、「どの商品に、誰が、いつタグを付けるか」で費用対効果が大きく変わります。

失敗しない導入の3ステップ

STEP1:「数える・探す」作業を道具に置き換える

最初に、最も時間のかかっている「数える」「探す」作業をなくします。

  • RFID:アパレルのようにタグを付けやすく、点数の多い商品に向いています。私がご支援したアパレル企業では、棚卸作業の時間が従来の1/10になりました
  • 重量センサー付きのマット:上に在庫を置くだけで、重さから個数を計算して記録します。ネジや梱包資材など、数えにくく単価の低い物の管理に向いています

STEP2:クラウドWMSで在庫をリアルタイムに見える化する

STEP1で集めた在庫データは、1か所にまとめて見える化して初めて生きます。その役割を担うのがクラウドWMS(倉庫管理システム)です。

クラウドWMSの多くは、普段使っているスマートフォンをハンディターミナルの代わりに使えます。バーコードを読み取って検品や入出庫を行うだけで、データがすぐに反映されます。在庫がリアルタイムに更新されれば、「あるはずの在庫がない」という事態を防ぎ、全部署が同じ在庫数を見て動けます。WMSのデータで何を見える化するかは、WMSのデータで在庫と生産性を見える化するには?で詳しく解説しています。

STEP3:小さく試して、効果を数字で示す

いきなり大きな投資をせず、「最も出荷数の多い商品」や「ミスの多い工程」など、効果を測りやすい対象に絞って試します。そして「導入前後で棚卸時間が何時間減ったか」「検品ミスが何%減ったか」を必ず数字で比べます。

実証実験の約8割という数字も、条件がそろって初めて出るものです。自社の商品・自社の現場で測った数字こそが、経営層の理解を得て本格導入の予算を確保する一番の材料になります。

まとめ

  • 経済産業省と JACDS の取り組みによる実証実験(2019年、ドラッグストア3店舗)では、RFIDで検品の時間が77〜81%、棚卸の時間が80%短縮。おおむね約8割
  • ただし、タグを貼る手間は別にかかり、水分の多い商品やアルミ包装は読み取りにくい。どの商品に誰がタグを付けるかで費用対効果が変わる
  • 導入は、①数える・探す作業を道具に置き換える ②クラウドWMSで見える化する ③小さく試して効果を数字で示す、の3ステップで

まずは、自社の棚卸や検品の中で「どの工程に、誰が、どれくらい時間を使っているか」を書き出すことから始めてみてください。それが、現場を変える確かな第一歩です。

当社では、在庫データの見える化と、棚卸・検品を含む業務の見直しをご支援しています。在庫の可視化・倉庫レイアウトや、業務フローの見直しもあわせてご覧ください。「何から測ればよいか分からない」という段階から、お問い合わせでご相談いただけます。