この記事の要点(2026年10月20日更新)

Q. 物流フロー図(業務フロー図)とは?
物の流れ・情報の流れ・作業の手順を、記号と矢印で1枚に表した図です。どこで待ち・やり直し・転記が起きているかが、目で見て分かるようになります。

Q. どんな記号を使う?
開始・終了(角の丸い四角)、作業(四角)、判断(ひし形)、データ(平行四辺形)、書類(下が波形の四角)が基本です。流れ図の記号は JIS X 0121(国際規格 ISO 5807 に対応)に、工程分析で使う記号は JIS Z 8206 に定められています。

Q. どう書く?
①目的を決める ②始まりと終わりを決める ③担当者ごとの列を作る ④作業を順に並べる ⑤現場に確認する、の5つの手順です。

出典: JIS X 0121:1986「情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号」、JIS Z 8206:1982「工程図記号」(いずれも日本産業規格)

「もっと効率化できないか」「どこにムダがあるのか分からない」。物流の現場でこう感じたとき、最初に試してほしいのが業務フロー図です。大きなシステムを入れる前に、今の仕事の流れを1枚の図にするだけで、改善の手がかりが見えてきます。

この記事では、物流フロー図に使う記号、書き方の手順、図からムダを見つける方法を、物流改善の現場を支援してきたコンサルタントの立場から解説します。

物流フロー図とは?

物流フロー図とは、物流の仕事の流れを、記号と矢印で表した図です。物流では、次の2つの流れを一緒に描くのがポイントです。

  • 物の流れ:入荷 → 検品 → 棚入れ → 保管 → ピッキング → 梱包 → 出荷
  • 情報の流れ:受注データ、出荷指示、伝票、在庫の更新、請求

物は動いているのに情報が届いていない、情報は届いているのに物が待っている。こうした「2つの流れのずれ」が、待ち時間や手戻りの原因になります。

どんな記号を使う?

流れ図の基本の記号

業務フロー図でよく使う記号は、次のとおりです。流れ図の記号は、日本産業規格の JIS X 0121(国際規格 ISO 5807 に対応)に定められています。

記号の形 意味 物流での例
角の丸い四角 開始・終了 「注文を受ける」「出荷完了」
四角 作業・処理 「ピッキングする」「梱包する」
ひし形 判断(分かれ道) 「在庫はあるか」「検品OKか」
平行四辺形 データの入出力 「出荷データを取り込む」
下が波形の四角 書類 「納品書」「ピッキングリスト」
矢印 流れの向き 作業と作業をつなぐ

社内で使うだけなら、この6つで十分です。大切なのは、同じ意味には同じ記号を使い続けることです。

工程分析の記号(JIS Z 8206)

倉庫や工場の作業を細かく分析するときは、JIS Z 8206「工程図記号」の考え方が役に立ちます。この規格は作業を次の4つの要素に分けて、それぞれに決まった記号を定めています。

  • 加工:物の形や状態を変える(物流では、流通加工・セット組みなど)
  • 運搬:物の位置を変える(移動・搬送)
  • 停滞:物が止まっている(計画どおりの「貯蔵」と、予定外の「滞留」)
  • 検査:数や品質を確かめる(数量検査・品質検査)

物流の作業を4つに分けてみると、多くの時間が運搬と停滞に使われていることに気づきます。どちらも商品に価値を足さない時間なので、改善の最初の候補になります。

どう書く?5つの手順

① 目的を決める

「ピッキングミスを減らしたい」「新人教育を短くしたい」「出荷の締め時間を延ばしたい」など、何のために描くかを先に決めます。目的によって、描く範囲と細かさが変わります。

② 始まりと終わりを決める

「注文を受けてから、出荷するまで」のように、図の始まりと終わりを決めます。範囲を決めずに描き始めると、図が膨らんで完成しません。

③ 担当者ごとの列(スイムレーン)を作る

受注担当・倉庫・配送会社など、担当者や部署ごとに縦(または横)の列を作り、作業をその列の中に置きます。プールのコースに見立ててスイムレーンと呼びます。誰がどの作業をしているか、担当の受け渡しが何回あるかが一目で分かります。

④ 作業を順に並べる

1つの箱には1つの作業を、「〇〇する」という動詞で書きます。分かれ道はひし形にして、「はい」「いいえ」の両方の行き先を必ず描きます。

⑤ 現場に確認する

描いた図を、実際に作業している人に見てもらいます。「実はこの前に確認が入る」「この書類は使っていない」といった、書類だけでは分からない情報がここで出てきます。現場が作成に関わることで、完成した図が使われるようにもなります。

フロー図から、どんなムダが見える?

描き上がったフロー図では、次の4つのサインを探します。

サイン フロー図での見え方 よくある原因
待ち 作業と作業の間に「停滞」が入っている 前の工程の締め時間、情報の届くのが遅い
やり直し 判断の「いいえ」から前の作業に戻る矢印 検品のやり直し、在庫の不一致
転記 同じデータを別の書類やシステムに書き写す システム間がつながっていない、紙とExcelの併用
受け渡しの多さ スイムレーンをまたぐ矢印が多い 担当が細かく分かれすぎている

例:ECの注文から届けるまで

ECの注文を受けてから、お客様に届くまでを、受注担当・倉庫・配送会社の3つの列で描いた例です。オレンジの番号が、上の4つのサインに当たる場所です。

EC出荷の業務フロー図の例。受注担当・倉庫・配送会社の3つの列に、注文から届けるまでの作業を記号で並べ、転記・やり直し・待ち・受け渡しの4か所に番号を付けた図

この図から、次のような改善の候補が読み取れます。

  • ① 転記:注文を手でWMSに入力し直している → ECの受注データをWMSにそのまま取り込めないか
  • ② やり直し:検品でNGになるとピッキングに戻る → ピッキングリストの並び順や、棚の表示が分かりにくくないか
  • ③ 待ち:梱包した荷物が集荷まで出荷場に置かれている → 集荷の時刻と、梱包の締め時間が合っているか
  • ④ 受け渡し:受注担当から倉庫へ、倉庫から配送会社へ、担当の列をまたぐたびに伝達ミスや待ちが起きやすい

実際の現場では、担当者によってピッキングの順番や梱包の手順が違っていることも、図にして初めて見えてきます。手順をそろえた図は、そのまま新人教育の手順書にもなります。

まとめ

  • 物流フロー図は、物の流れ・情報の流れ・作業の手順を記号と矢印で1枚に表した図。2つの流れのずれが、待ちや手戻りの原因になる
  • 記号は、開始・終了(角の丸い四角)、作業(四角)、判断(ひし形)、データ(平行四辺形)、書類(下が波形の四角)が基本。規格は JIS X 0121(ISO 5807 対応)。作業の分析には JIS Z 8206 の加工・運搬・停滞・検査の考え方が使える
  • 書き方は、目的 → 始まりと終わり → 担当者ごとの列 → 作業を順に → 現場に確認、の5つの手順
  • 図からは、待ち・やり直し・転記・受け渡しの多さの4つのサインを探す

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