この記事の要点(2026年10月20日更新)
Q. 物量は変わらないのに、倉庫がいつも忙しいのはなぜ?
歩く距離と、人や台車の行き違いが増えていることが多いです。倉庫研究の代表的な文献では、人が棚まで取りに行くピッキングの作業時間のうち、約半分(50%)が歩行(移動)とされています。Q. 動線の重なりはどう見つける?
作業の様子を動画で撮るか、出荷データから「よく出る商品がどこに置かれているか」を調べ、行き来が集中する通路や棚の前を特定します。出典: R. de Koster, T. Le-Duc, K. J. Roodbergen「Design and control of warehouse order picking: A literature review」European Journal of Operational Research 182(2007)の図4(Tompkins ほか 2003 による)
「物量は増えていないのに、なぜか現場の残業が減らない」「以前よりピッキングミスや商品の破損が増えてきた気がする」。
物流の現場で、このような課題に直面していませんか。その原因は、作業者の動線の重なりかもしれません。人や台車が同じ通路や棚の前に集まり、歩く距離と待ち時間が少しずつ増えていく状態です。
この記事では、作業時間の内訳と労働災害の統計を確認したうえで、動線の重なりの見つけ方と減らし方を、物流改善の現場を支援してきたコンサルタントの立場から解説します。
倉庫の作業時間は、何に使われている?
人が棚まで商品を取りに行く倉庫(ピッキングの多くはこの方式です)について、倉庫研究の代表的な文献は、作業時間の典型的な内訳を次のように示しています。
| 作業 | 作業時間に占める割合 |
|---|---|
| 歩行(棚から棚への移動) | 50% |
| 探す(棚・商品を探す) | 20% |
| 取る(棚から取り出す) | 15% |
| 準備(伝票・機器の準備など) | 10% |
| その他 | 5% |
出典: R. de Koster ほか(2007)の図4「Typical distribution of an order picker's time」(Tompkins ほか 2003 による)。現場ごとに割合は違います。
作業時間の半分が「歩くこと」に使われています。歩行は商品に何の価値も足さない時間なので、改善の最初の候補になります。歩く距離を左右するのが、商品の置き場所と通路の使い方、つまり動線です。
動線が重なると、何が起きる?
時間:減速と待ちが積み重なる
狭い通路ですれ違うための減速や、目的の棚の前がふさがっていて生まれる待ち時間。一つひとつは数秒でも、1日に何十回と繰り返されれば、月・年では大きな労働時間になります。歩行が作業時間の半分を占める以上、ここが膨らむと人件費にそのまま響きます。
品質と安全:混み合う場所でミスと事故が起きる
人や台車が一か所に集まって混み合うと、焦りから商品を雑に扱ったり、違う商品を取ったりするミスが起きやすくなります。
さらに深刻なのは事故です。厚生労働省の統計では、2024年にトラック運送などの陸上貨物運送事業で休業4日以上のけがをした人は16,292人でした。事故の型で見ると、動線と関わりの深い「転倒」2,980人、「激突」1,141人、「激突され」880人を合わせて5,001人、全体の約3割です(最も多いのは「墜落・転落」の4,188人)。
出典: 厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表」(2025年5月30日、同年8月22日訂正)の別添「令和6年における労働災害発生状況(確定値)」別表4
通路を人と台車・フォークリフトが共有している現場では、動線の整理は安全対策そのものです。
動線の重なりはどう見つける?
作業を動画で撮る
スマートフォンで作業の様子を撮影し、誰がどこで止まっているか、同じ通路を何度往復しているかを見ます。特に次の3つに注目します。
- 同じ通路の往復:取り忘れや、伝票の順番と棚の並びが合っていないサイン
- 棚の前での待ち:よく出る商品が1か所に固まっているサイン
- 人と台車・フォークリフトの交差:通路の使い分けができていないサイン
出荷データで、よく出る商品の置き場所を調べる
出荷データ(いつ・どの商品が・何個出たか)があれば、商品ごとの出荷頻度と置き場所を突き合わせられます。よく出る商品が出入口から遠い棚や、1つの通路に集中していれば、そこが動線の重なりの原因です。
動線の重なりを減らすには、何から手をつける?
よく出る商品を、出入口の近くへ(ABC分析)
出荷頻度で商品をA(よく出る)・B・Cに分け、Aを出入口や梱包場所の近く、取りやすい高さに置きます。歩く距離が短くなり、探す時間も減ります。ただしAを1つの通路に詰め込むと、今度はそこが混み合うので、複数の通路に分けて置くのがコツです。
作業エリアを分ける(ゾーンピッキング)
作業者ごとに担当エリアを決め、長い距離の移動と行き違いを減らします。エリアの間で商品を受け渡す場所を決めておくことが前提です。
人と車両の通路を分ける
フォークリフトや台車の通路と、人が歩く通路を分ける、一方通行にするなど、交差そのものを減らします。床の色分けや表示だけでも始められます。
小さく試してから広げる
いきなり倉庫全体を変えるのは避けます。特定の商品エリアや作業グループで試し、歩行距離や作業時間を前後で比べてから広げます。現場の納得感を得ながら進めることが、失敗しないコツです。
倉庫が広くなるほど、動線の差は大きくなる
国の建築着工統計では、新しく建つ倉庫の1棟あたりの平均床面積は、2004年の380㎡から2024年には752㎡と約2倍になりました。倉庫が広くなるほど、歩く距離は長くなり、置き場所と動線の決め方で作業時間の差が大きく開きます。詳しくは倉庫の新築を数字で見るをご覧ください。
新しい倉庫への移転や増床を考えているときこそ、出荷データからレイアウトを見直す好機です。
まとめ
- 倉庫研究の代表的な文献では、ピッキング作業時間の約半分(50%)が歩行。歩く距離を減らすことが改善の最初の候補
- 陸上貨物運送事業の休業4日以上のけが(2024年、16,292人)のうち、転倒・激突・激突されが約3割。動線の整理は安全対策でもある
- 見つけ方は、作業の動画と出荷データ。減らし方は、ABC分析による配置、ゾーンピッキング、人と車両の通路分けを、小さく試してから広げる
当社では、出荷データから在庫の配置とレイアウトを見直すご支援と、毎朝の配置表づくりをWeb化した庫内業務配置管理ボードの開発を行っています。業務フローの見直しや在庫の可視化・倉庫レイアウトの進め方もあわせてご覧ください。
自社の倉庫の動線を一度見直したい、データはあるが何から見ればよいか分からない、といった段階からご相談いただけます。お問い合わせからお気軽にどうぞ。
